丘の上の木の木蔭。
 寝そべる少女と幹に身を寄せ、木漏れ日をただただ見つめる青年。
 隣の彼女は熟睡中。
 昼寝にはちょうど良い午後の昼下がり。
 
 木漏れ日がまぶしい。
 
 そう思って青年は目を細めた。
 
…寝られない。夢を見るのが怖いから。
 
 寝ている間の記憶は、ない。それでも、夢で罪を犯した。それがとてつもなく怖かった。
 
 …それがいつ現実になるのかが怖くて、怖くて。
 
 
 
自分の中に殺意がないと言ったら嘘になる。
誰でもそんなものは持っている。
けれど…許せなかった。
青年の復讐心は次第に大きくなり、成長するにしたがって、それは現実味を帯びてきた。
 
それをまだ実行に移さないのは、いや、移せないのは。
隣にいる、一番大切な、たった一人の血縁。
 
彼女は復讐という言葉を強い意志で自身の辞書から排除している。
「今」を生きることができる。それが彼女だった。
彼女がいる限り、青年は動くことはできない。
 
 
 と、隣の彼女が薄眼を開いているのに気が付く。
 
「…目ぇ覚めたか?」
 
 青年の問いには答えず。
 少女はそのまま青年に問う。
 薄眼の状態のまま、寝そべり青年に問う。
 
「どこに、行くの?」
 
 一瞬目を丸くして驚いて。
 そうして青年は少女の問いに答える。
 真面目に一瞬考え、青年は真面目に答える。
 
「…どこにも行かないよ」
 
 そのままの答え。少女が微笑んだ。
 
「素敵なことね」
 
 そういってまた目を閉じてしまう。
 すぐに聞こえてくる寝息。瞬く間に夢の中。
 口元に笑みが浮かんでいるところを見るといい夢のようだ。
 
 
 青年もそれをみて笑みを浮かべる。
 そうして寝そべる。
 目をつぶる。
 
 …大丈夫、俺は俺。夢は夢。
 
 眠気が襲う。現実と夢の境目がわからなくなる。
 
 
 あぁ神様。
 
 
どうぞこのまま、ずっとこのままにしておいてください。
夢に魘されることなどなく、
彼女がずっとそばにいてくれるように。
 
 
復讐心は消えない。それでも。
 
 
彼女がいれば、彼女がいるだけで。
 
 
僕は、僕として生きていけることができるのです――。
部活で書いたやつですが没作品。

部誌に載せようと思ったら暗いのばっかりなんで没にしました笑

なのでこっちにUP。

この兄妹は両親が殺されてます。

で、兄は復讐しようと考えてるけどまだ幼い(っていっても14歳)妹は無邪気で。

それでまだ行動にうつせない兄。みたいな。
2009/12/28   緋隅小夜
 

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