小さい頃、空に輝く天の川を見て思った。

天の川の最初――水源――は一体何処なんだろう、と。





歩く。
ここは近所の川の横。
俺と彼女と二人だけで。


ここはだいぶ田舎だ。
まわりでは木々がざわめいている。

水も綺麗だ。


「ったく、天の川なんて空のものだろう」
「だから無償に来たくなったのっ」


未里が「天の川の水源に行こうよ」というから来たのに。
なんで近くの川なんだ。


「ねぇ、この川はとっても透き通ってるよね。天の川もこんなのなのかな」
「さぁ、あいにく俺は天の川に行ったことはないからね」


興味なさそうに言う。と、道が消えた。


「おい、どうすんだ?つかほんとに水源まで行くのか?」


構わず未里は進む。
しかも草が生い茂る中をスカートで。
慣れた感じで草を掻き分けると、微かに道ができていた。

頻繁に誰かが通るのだろう。でないとこんな道、すぐに草に埋もれてしまう。


「こっち」


夏があけたばかりの今は、まだ少し暑い。

彼女は進んだ。
俺は黙ってついていくしかなかった。



しばらく歩いていると、いきなり視界が開けた。


「………え?」


小さな公園みたいなところだった。
薄い黄土色のレンガでできた地面は、レンガのあいだから草が生え、レンガ自体は汚れていた。

端の方にポツンといるベンチには草が巻き付いていた。
元々は白かったのか、所々ペンキかなにかで白いものが残っている。

そして真ん中。
噴水のようなものがあった。
石がいくつも積み上げられて段々となり、その中を水が通り、石の上をさらさらと流れ落ちる。
石は人工的に削られたのか、中に沿っていた。だから水はベールのように下へと落ちて行く。
それが、煉瓦の間につくられた溝をつたって川に続いていた。


「なんだこれ…」
「フフ、ビックリした?」


笑っていう未里の声は、とても楽しそうだ。
噴水の近くへと歩いていくと水に触れる。


「わたしのお気に入りの場所なんだ。湊にはまだ教えてなかったでしょ?」


…そのまえに聞きたいことが。


「未里、どうやってこんなとこ」
「ん?あぁ、小さい頃ね、あたし迷子になったことがあったでしょ?そんときに迷い込んできてから」


さらりと答える。
…迷子ってヲイ…。


「キレイでしょ?最初に見た時、天の川は神様や女神様が流してるんだって信じてたから、
ここが天の川の始まりだって思ったの。…なんか神様なオーラ感じない?」
「……そうか?」
「そうなのっ。もう、湊は昔からそーいうの鈍いんだから」


未里は外方を向いてそう言った。

…不思議な場所だ。


「でも、ここはいい場所だよ。気に入った」
「あ、やっぱし?湊ならそういうと思ったんだっ☆」


未里が嬉しそうに言った。
天の川の水源。
それがどんなものかは知らないが、こういうのも悪くない。


俺は笑うと未里に続く。
綺麗に透き通った水に手を伸ばした。







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天の川の水源は何処?というのは実際わたしが抱いた疑問。
こんな場所があったらいいなぁ。 

 

もともとは自作のお題「77のお題」の二番目にあったお題でした。
お題を明記するのがめんどくなったからそのまんま。
気まぐれで書いたものだから何いってるか自分でもさっぱりです。

2009/12/25  緋隅小夜