「……そこにいるのは誰だ」

声をかけられたかと思うと刃物を突き付けられる。
星明かりさえない暗がりで、刃がキラリと光った。

「僕は僕だよ」
「何者だ?」
「何でもないさ」

男は少年が手ぶらなのを見て刃物を離した。

「こんな時間に、何をやっているんだ小僧」
「光を待ってるんだよ」

少年はじぃっと先を見ていた。

「暗がりでは何も見えやしない」
「火種は」
「ない。だから昼しか動けない」

男は不意に枝を折り、自分の持っていた火種の火を分けた。

「やる」
「でも、僕は夜は動かない」
「だが火があれば何かと便利だろう」

しばらくその火を見ていて、彼は首を振った。

「やっぱりいいよ」
「……」
「夜は暗いものだから」
「………」
「でも、ありがとう」

自然なものは自然なままがいいのだ。

神の子と呼ばれた少年は自然の大切さを知っている。
それに、強大な魔力を持っている彼には、星のことが分かる。
彼の魔力はこの星から与えられるものだから。

「僕には必要ないんだ」

――この星から生まれた、子供には。