彼女はいつでも綺麗だから。
「…何よー」
じいっと見ているとアキが頬を膨らませる。
…まぁ見ているという意識は全くなかったんだが。
「…あ?」
「あたしの顔、なんかついてるの?」
くいっと覗き込まれてきたからびっくりしてうおっと声をあげて大きく退く。
そんなに顔を近づけられたら赤くなる。…それは流石にハズい。
「なんもついてねぇよ」
「そう?よかったー歯に青のりかなんかついてんのかと思った!」
ほっと胸を撫で下ろす。
…可愛いな、と思った。素直に。
「琢巳はいっつも冷静だよね」
ちょっと拗ねたような顔をしてアキは俺を見て言う。
…冷静?いやいや、お前といるとドキドキの連続だ。(いろんな意味で)
好きだ。好きだ。
お前が好きだ。
言いたいのに言えない。俺は全く素直じゃない。
…言えたら、どんなにいいか。
「冷静じゃねぇよ」
笑って言う。
照れ隠しにくしゃくしゃっとアキの頭を撫でまわした。
「お前といるとドキドキする」
「…それ、あたしがドジだって言いたいのよね」
もうしーらない、とぷいっとそっぽを向いてアキが走り出す。
年の割には幼い。それでもやっぱり綺麗で可愛い。
…言えたら、どんなにいいか。
けれど俺は小心者。
この関係が崩れることが、怖いのだ。
だから言えない。
…アキと俺。この関係が、一言で崩れることが、怖かったから。
ただ、見ているだけでいい。
…無欲だ、と思いつつ、それでこの幸せが続くなら、と思う。
本気でそれも、いいんじゃないか、と。
千歳の誓い 恋愛5題 淡く より 03何時までも見ていたいと思う