聞いた瞬間に思わず抱きしめた。
小さな体。俺のものにしたかった。ずっと。

それでも言の葉にするのが怖くて。
この関係が崩れて、気まずくなるのが嫌で。

好きで好きでたまらなかったのに、俺は言葉を言わなかった。

怖かった、んだ。

 

「…琢巳っ!?」

振り向いたアキの顔は真っ赤だった。

「え、え、え?なんで!?なんでいるの?」
「…悪い、追っかけてきた」

ほんとのところ悪いなんてこれっぽっちも思っていない。
彼女が言った独り言。それで俺はこんなことができているのだから。

「え、え、え!?じゃあ聞いてたってわけ!?」
「…しっかりばっちり」

ぎゅっと抱きしめる。
言葉にできない俺が情けない。

「ひ、ひどいよ琢巳ー!」
「あぁ、そうかもしれない」

なのに、こんなにうれしい。
ぎゅっと抱きしめる。ぎゅっと。

「わ、わ、苦しいっ…」
「悪い」

謝りつつぎゅうっと抱きしめる。
つぶさない程度に。

「ごめんな、アキ」
「……」

言えなくてごめん。
けれど離したくない。

「……そんなの言われちゃ、怒るものも怒れないよ」

仕方がないなぁ、と溜息をついて、アキはきゅっと俺の腕を握った。

「大好きだよ、琢巳」

愛しむように言われて、嬉しくて。
ふいに振り向いてアキがいった。

「…顔、真っ赤」
「へ?」
「琢巳、顔赤い」
「なっ!お前こそ!」
「うっ…」

抱きしめたまま。
そう言ってフッと笑う。
頬を染めたまま。

「変なの」
「お前こそ」
「えー、琢巳が変なのよ」
「お前だよ」

笑いながら言い合って。
あぁ、幸せだ、と呟いて照れくさくなり。

慌てて赤く染まった顔をアキからそむけた。

 

千歳の誓い 恋愛5題 淡く より  05頬を染める僕と君

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