三月某日。
わたしの中学校で卒業式が行われた。
3年生のわたしたちは卒業証書を抱え、胸に花をつけて誇らしげに立っている。

桜の花びらが舞って散った。
さっきまで一緒だった花はもう離れ離れで。



遠くから聞こえるクラスメイトの会話。


「ねぇ、早く告りなよ!」
「そぉよぉ、高校違うでしょ!?」
「えーっ…でもぉっ…」



「お前高校何処行くんだっけ」
「○○高校だよ」
「え、工業高校!?大学もそっちか?」



高校は殆どの人が皆違う高校に進学するようだ。
中には進学せずに働くひともいるらしい。

みんながどんどん離れてく。

式も終わった今、ちらほらと帰る人がいるのが伺える。

卒業式を単なる思い出にはしたくなかった。
かと言って何をしたらいいのか分からない。

と、不意に肩を叩かれた。
振り向くと親友が笑ってた。


「クラスで写真とろうって。思い出にしようよ」
「そのあと打ち上げだってさ、勿論参加するでしょ?」

基本クラス自体が仲良かったA組は、卒業式だけではまだ物足りないらしい。

「当たり前でしょ」

にっこり笑って小突くと、二人とも大袈裟にリアクションをしてくれた。



わたしは、来月からパリに行く。

「ほら、早く!」
「うん」

きっとあっちに桜はない。
はらりはらりと散る。
まるで別れの挨拶のように。



――今だ。今をわたしは生きている。



 思い出が思い出として残る前に。

「ねぇ」

二人に後ろから話しかける。
気が付くとクラス全員がいた。

「あっち行っても頑張ってよ?」
「留年とかするなよな」
「お土産よろしくね」

皆がわたしに声をかけてくる。

「…ありがとう」

びっくりしたけど嬉しかった。


桜は変わらず舞っている。
まるで、わたしたちを祝福するように。

ただひらひらと。ひらひらと。





なんでパリにしたんだろ?笑

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