たいせつだから、もうすこしだけ

　授業中なのにサボって俺らは屋上に居る。

　毎度毎度の当たり前。…サボるのが当たり前ってのも我ながらどうかとは思うが、そこはそれだ。この際もう気にしない。

　不意にお前がぽつりと呟く。

「…空が青い」

「当たり前」

　何をいきなり言い出すんだか。

　コイツはいつも唐突で。

「雲も白い」

「それもまた」

「当たり前って？」

「…赤い雲だったら怖ぇ」

　青い空、白い雲。どっかの標語みたいだ。

　当たり前すぎて寒気がする。

　当たり前がすべていいとは限らない。当たり前を打破したいのが今の俺。だから当たり前のことをいうコイツが今はすっげぇ憎たらしい。

「当たり前って大切だよ」

「んだよいきなり。気色悪」

「失礼な」

　ぱちっと俺の頭をお前が叩く。

　これもこれで当たり前。でも俺は、お前とそういうことがしたいんじゃなくて。

　お前もそう思っているはずなのに（思い込みじゃなくて本当に）、どうしてお前は認めない？

「…ストレス発散できなくなるなぁ」

「はぁ？」

「なんでもない。こっちの話」

　言い聞かせるようにいう。どうしてだ？

　俺はお前にとって、ストレス発散道具ってだけか？本当に？

　そのはずはない。それは何より、お前の表情がいつも語っている。

　おまえ自身知っているはずなのに、お前はいつも無視をする。

　だから、言った。

「……お前ってさぁ」

　馬鹿だよなぁ。

　呟いた言葉は真言でもなく、戯言でもなく。

　真言といえば真言だし、戯言といえば戯言だ。

　お前は馬鹿であり、賢い。

　なのにお前は泣きそうな笑い顔で言う。

「今更気がついたの」

　その顔がとても、愛おしくて。

　それでも馬鹿はふりを続けるお前が可哀相で。

「……いーや？前からそう思ってたけど」

「…失礼なヤツ」

　だから茶化して終わらした。

　当たり前をお前が大事にしなくなるまで。

　俺はいくらでも待つ。

　そうして俺は足元に目をやった。