「ねぇ、これどう?」
「あ?」
「…思い通りにはいかないね」
 膨らんでみせる、彼女。
 何が何だか分からない、彼。
「夢ではあんなにうまくいったのに」
「何の話だ」
 呆れ。溜息。冷めた目で彼女は彼を見竦める。
「…知らないならもういいっ」
「あっ、おい」
 拗ねる彼女。焦る彼。握りしめた彼女の手にはなにやら紙切れが握られている。
「俺なんかしたか?なんか…」
「十分してるわよ、ドアホ!」
 夢の中だったら、あんたはチケットすっごくほしがってたのに。それだから一緒に行けたのに。
 
 
 夢の馬鹿、と少し夢を恨んだ、そんな日の喧嘩話。
 
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